漆の採取


漆か

漆は自然の塗料・接着剤として仏像や寺社仏閣の内外装から、日常に使う箸、椀等まで幅広い分野で、古くから我々の生活に密着してきました。

 

漆の採取の方法は、手間も時間もかかる、根気のいる作業です。

かぶれる漆の木の幹にキズをつけ、そこから染み出る乳液を朴(ほう)の木の皮でできた桶に入れ採取していきます。 

 

昭和10年ごろまでは、6月頃から秋にかけて漆かき職人が漆を採取する旅に出ていました。1人、2里四方(約64km2)400~500本の漆の木から4日間で一巡する計画で、漆を採取していました。

 

漆液は疵(きず)つけたところから木汁を出すと4日間、木が休むため漆は出ません。5日目以降、天候のよい日を選びながら漆かきを続けます。

 

まず、1日100本位の木に、「目立て」という水平溝をつけながら4日間、山をまわり、次に「辺掻き」という傷つけを行い、漆かき作業をしていきます。樹勢を弱めないように気をつけながら、辺掻きをすすめ、一巡すめば、2回目、3回目...と繰り返し、8月~9月下旬までに25辺を数える辺掻きをしていきます。

 

「殺し掻き」といって、ひと夏かけて、一本の樹が出す漆液を総べて掻き取る方法があり、最後は切り倒します。確実に新芽が出るように、鋸は使用せず、斧で切り倒し、樹を大切にしています。

 

こうして、人の手により採取された漆を使って、漆器がつくられます。